2016-12-31

アガサ・クリスティー「ハロウィーン・パーティ」


女流探偵作家のアリアドニ・オリヴァが顔を出したのは、ティーンエイジャーが集められ、さまざまなゲームが行われるハロウィーン・パーティ。その最中にある女の子が、自分は殺人を目撃したことがある、と言い出す。注目を引くためのでたらめだ、と誰も本気には取らなかったようなのだったが、パーティが終わったときにその娘は死体で発見される。すっかり動転してしまったミセス・オリヴァは旧知のエルキュール・ポアロに助けを求めた。


1969年発表のポアロもの長編。
作中人物たちの多くは、年端もいかない子供などを殺すのは精神異常者の仕業だ、と口にするが、ポアロははっきりとした動機のある犯行である、と考えて捜査を行う。その過程で、過去に起こったいくつかの事件の姿が浮かび上がってくるが、それが今回のものと関係があるのかはわからない。
ひたすらポアロが聞き込みを続けていくという展開のため、やや単調さを感じますが、物語後半の急展開とそこからのスリルはなかなかのもの。

フーダニットとしてはシンプルな手掛かりが直接に犯人を指し示すもの、なのだが、あまりに状況が作り物めいている上、余詰めの配慮がまるで欠けている。また、複雑なものである犯罪の背景に関する伏線に乏しいのもいただけない。
一方で、被害者の心理を巡るツイストは実によくできていると思います。

ややファンタスティックな犯人像は決して悪くないと思うのですが、無駄に多く感じられるキャラクターたちや、未解決のままで終わる過去の事件などのせいで、小説としては冗長なものであることは否定しがたいですね。

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