2017-03-19

パーシヴァル・ワイルド「悪党どものお楽しみ」


〈クイーンの定員〉にも選ばれた、ギャンブルのいかさまをテーマにした連作短編集。
読み始めてから気付いたが、これは以前にも読んだことがあるな。もっとも、細部はほとんど忘れているし、文庫化に際して作品が追加されているので何も問題はない。
収められている作品は1920年代後半に書かれたものであり、同じ作者による他のミステリ作品よりも一時代から古い。けれど、そのことはマイナスになっておらず、むしろ作品内の明るく洒落た雰囲気に結びついているように思います。

引退した凄腕のギャンブラーで今は農夫をしているビル・パームリーは、紳士だがお調子者のトニー・クラグホーンをはまり込んだトラブルから救ってやった。そのことをきっかけにしてビルは、トニーからさまざまないかさまを暴く役目を押し付けられるようになる、というのが物語の基本パターンだ。いくらうまく出来ていても同じような設定が続けば少しは飽きてきそうなものだが、いやいや。
各話ごとで異なるいかさまのトリックもさることながら、やがて明らかにされる事件の構図が意外性に富んでいる。こんな話だろうな、というこちらの予想を気持ちよく裏切ってくれるのだ。
また、これらは決して推理の物語とはいえないけれど、ビルがいかさまの手口や首謀者を推測していくロジックには意外なほどにスリリングな面があります。

全編通じて愉しく読めましたが、特に気に入ったのは「ビギナーズ・ラック」という作品。連作の中頃だからこそ効いてくる変化球のプロットにしてやられました。意外な真相に手掛かりの妙が揃って、ミステリとしてもいい出来栄え。
また、「火の柱」での謎はまるで魔法のような不可思議。舞台設定にもちゃんと意味があって、ちょっとチェスタトン的なセンスを感じましたよ。

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