2017-10-29

フィリップ・K・ディック「銀河の壺なおし〔新訳版〕」


西暦2046年、陶器の修復職人であるジョーは仕事にあぶれていた。既に陶器はプラスティックに取って変わられ、殆ど使われなくなっていたのだ。政府からの補助金で食いつなぎ、無為に過ごすことによる閉塞感に押しつぶされそうな毎日。しかし、そんなある日、ジョーの元にその技術を見込んだ巨額の仕事が舞い込んだ。


1969年の長編。
他の星系を舞台にした物語で、うだつのあがらない男の前に大きなチャンスが訪れる序盤はさながら冒険ファンタジー風。展開はスピーディで、なにやら過去がありそうなヒロイン、全てが書かれている預言書、光と闇の相克など、面白そうなアイディアが次々と登場して退屈するところはありません。
ユーモア要素も盛り込まれているし、異星生物の描写や、やたらに人間臭いロボットなども魅力的であります。

さくさくと読んでしまえるのですが、何しろ物語の様相が急激に変容していくので、さまざまなものが掘り下げられること無しに放置、という感は否めないです。半ばディストピア化した地球が全く省みられなくなっているのはなんとも。
にしても、この先読みの出来なさは凄いな。

読んでいる間は面白いのだけれど、何だかわかったようなわからないようなお話でした。まあ、気楽な娯楽作品として受け取ればいいのだろうな。
来月は『シミュラクラ』か。

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